
1.例会では
会員は断酒歴・断酒会歴に関係なく平等です。しかしながら、会員それぞれの生活や環境も違いますから、話される体験談は千差万別であり、すべての体験談が個々人の大切な人生の一こまであり、尊重されるべきのものです。本音が語られていれば十分過ぎるほどに十分であり、こうでなければという体験談のおしつけやほかの人の体験談についての批判はやめましょう。
また、例会中は私語を慎み、ほかの人の体験談を熱心に聞きましょう。「熱心に聞く努力を止めるようになると、実際経験したことが無数にあるにもかかわらず、話せることが段々と少なくなり、自分を語るのにマンネリ化し、同じ話のくり返ししか出来なくなるのです。」(『松村語録24』)
2.体験談について
体験談は「言いっぱなしの、聞きっぱなし」が基本です。
飲んでいたころの言動を包み隠さず口にすることで、自分の問題行動とこころの動きを確認することができ、それを聞いている人は、埋もれていた記憶を呼び覚まして自分の体験を思い出すことができたりします。
記憶の糸を手繰っていく作業はしゃべっていくうちに、当時のことを急に思い出したり、また、これ以上は恥ずかしいからしゃべりたくないと思っていた枠を話の延長で外して口にすることができるようになります。そのためには、体験談を途中で止めてしまうと折角の内容が引っ込んでしまうことがあります。
そのための「言いっぱなし」であり、例会場では何をしゃべってもいいという意味ではないのです。特に入会の新しい人は過去を振り返るきっかけになるためにということで、体験談が少々長くなっても途中でとめないで、「聞きっぱなし」で、しゃべってもらうということになっています。
一方、体験談は深く、細かく掘り下げれば掘り下げる程、個人のプライバシ-にかかわる内容になってきます。本人は何よりも周りの人を信頼した上で、口にしたことが、例会が終わったあとその内容が外部へ漏れたらとんでもないことになります。「聞きっぱなし」には、例会で聞いた内容を絶対に外部では口にしないという意味も含まれているのです。
例会終了後に本人に対して、本人が例会で語った体験談の内容を話題にする人を時々見かけますが、本人の方から話題にしない限りは、内容に触れるのは慎むべきです。体験談は人に聞かせるものですが、自分の過去を振り返るために語られるものであり、他の人はそれを聞いて自分の過去を思い出すためのきっかけにするもので、体験談を聞いてあの人はああいう人だとその人となりを判断するためのものではないし、本人も例会の中だから口にしているということを忘れないようにしましょう。
また、体験談の中で自分自身の体験を語らずに、ほかの会員のことを話題にするのはやめましょう。私たちは、個々の体験談をその人本人の口から直接聞くために、例会に出席しているのですから。
3.新入会の方に対して
心から温かく迎えましょう。新しい方が参加された時に話される体験談は最初のうちは少々わき道にそれることもありますが、勇気を奮い起こして話を続けるうちに次第に過去の掘り起こしができるようになってこられます。少々長くなっても出来るだけ幸抱強く聞いてあげるようにしましょう。
新しい方の体験談に対してのアドバイスは、体験談の中で直接取り上げて答えるのではなく、「そのアドバイスはやはり自分の体験発表の形でなされるべきだ」(『松村語録52』)とされています。そして励ましのことばも、例会中ではなく、始まる前、休憩時間、終った後などにかけていくようにしましょう。
4.受付について
出席名簿は代筆を頼むことなく、必ず本人が記帳しましょう。時間の途中での退席などの事情がある人は、前もって司会者に伝えましよう。
病院等からの紹介状があるときは、支部長に渡すようにして下さい。
5.司会をする時に
例会の開始時聞と終わりの時間(例えぱ7時~9時)を厳守しましょう。「酒のために生活の折り目切り目を失っていた私達が、断酒して社会に適応するために一番手近にあってやれることが、この時間励行でもあるのです。」(『松村語録28』)また、参加者にとって、たとえその例会の内容が素晴らしいものでも、時間オーバーになると帰りの交通機関が気になり、イライラして全てが台無しになってしまいます。
司会者が体験談に注釈をつけたり、アドバイスをしたりすると、ほかの人の体験談に触発されて湧いてくる「自分も本音を語ってみよう。」という気持ちにまで影響を与えてしまうことがあります。参加者同士の体験談が交換される中で次第に生まれて来る断酒への決意という例会の雰囲気を壊し、逆に参加者の反感をかって例会への不参加につながってしまいます。体験談の受け止め方、感じ方は人ごとに違うことを十分に認識して、司会者は例会の進行のみに徹してください。
また、新しい方に対して、体験談のたびに励ましのことばをかけるのはやめましょう。断酒の道を歩み出したばかりの新しい方は、往々にして「自分は生徒で周りは先生」だと錯覚されてしまう場合もあるようです。
断酒会は上下関係のない仲間関係という組織であり、例会において交換されるお互いの体験談を通じて会員同士が教えかつ教えられるという自助グループです。新しい方の体験談から断酒歴、断酒会歴の長い人も十分に学ばせてもらい、自分の断酒の糧にさせてもらう訳ですから、その体験談に対して一方的に「頑張って下さい。」という発言はおかしいということになります。
6.家族について
家族の誓いにもあるように「アルコール依存症は家族ぐるみの病気です。病気だから治さなければなりません。」断酒会では、家族も酒害から共に回復していくために例会に出席して、それぞれの体験談を語ります。自分の家族ではなく、ほかの会員の家族の体験談を聞いて、過去の記憶を取り戻すことがよくあります。
給茶等は家族の役割だとまかせることなく、貴重な体験談を語ってくれる仲間として、家族も会員と同じ立場で例会に参加していることを認識しましょう。
本人が入会する前に家族だけで参加されている方もおられます。本人は飲酒がまだ続いており、飲んでいるときの気持ちを何とか理解したいという思いでおられます。私たちには、例会において近況報告や決意表明でなく、ひたすら酒害体験を語っていくことが求められます。
7.その他
会員間での金銭の貸し借りはやめましょう。特に、先輩が立場を利用したような貸借関係は絶対にやめてください。新しい方にとっては断りきれません。貸しても借りても問題が起きた時に気まずくなり、やがて会を離れる原因に繋がります。仕事の世話もしないほうがいいようです。仕事での関係が出来ますとそれが上下関係につながります。
個人や会の批判はやめましょう。新しい方が例会出席を重ねながら断酒会の印象を自分自身で感じ取り、自分なりの断酒会への関わり方を築き上げていく前に、先輩会員が自分の意見をおしつけると偏った先入観を与えてしまうことにもなりますし、断酒会についての誤った理解の原因にもなりかねません。
会員には、色々なタイプの人がいますが、断酒に対する前向きな姿勢さえあれば、断酒会はどんな性格のひとでも受け入れる大きい包容力を持っており、個人差を理由に批判されることはないと確信して下さい。
「例会で学んだことをただひたすらにこつこつと積み重ねることによって、まず自分自身の改善に全力を集中する人。自分自身の改善は行動の中から自然に出来ると考えて、例会だけでなく酒害相談、教宣活動と最初から幅広く動く人。例会は安らぎを与えてくれる場所と考えて、ゆったりとした表情で座っている人。例会は厳しさを教えてくれる場所と考えて、いつも緊張した表情でいる人。暗い過去を主にして体験発表をする人。明るい現在の生活を主にして体験発表する人。断酒に真剣に取り組む姿勢は同じでも、性格の違いから来る断酒方法論はさまざまです。そうした時、どちらの考え方が良いか悪いかを、断酒会は論じるような愚かなことはしないのです。基本的な断酒会の持つ理念さえ理解されていれば、方法論はその人その人の体験の中で少しずつ変ったり、または変ることなくしっかりと自分の心の中に定着するのです。日常の実践活動が真剣になされていればとやかく批判されることはないのです。」(『松村語録37』)
8.最後に例会の検討
新人の定着が悪かったり会員の離脱について、来なくなった人にだけ原因があるのではなく、会の運営や例会にも問題があることも考えられます。定期的に役員会などで会や例会の中身の検討をしていきますので、疑問に思うこと、気付いたことがあれば、遠慮なく役員まで伝えるようにしてください。
※『指針と規範』、『松村語録』、「大阪府断酒会役員一日勉強会資料」を参考にして、吹田市断酒会が作成したものです。
